1.未知なる分野に進出しない
2.自前主義で新事業を展開しない
3.管理限界を決めて撤退する
日本企業で立ち上げ時に「ご臨終」の姿、すなわち撤退基準を策定する企業は少なかった。製品やサービスの上市のためには、戦略立案担当者と製品開発担当者がタッグを組み、経営陣と相見えながら議論を重ねることになる。そこには上市のための基準、例えば、想定売り上げをいつまでに確保できるのか、生産拡大により利益率がどのように推移するのかなど、さまざまな基準が設定されている。
ところが、「この売り上げを何期連続確保できなければ撤退」「利益率がこの基準を満たさなくなったら撤退」など、製品・サービスを終える基準が明らかになっている企業はほとんどない。その結果、なんとなくダラダラと売れない製品・サービスが継続されてしまうのである。
「忘れる」「借りる」「学ぶ」という3つのハードルを適切に超えていかなくては、グループ内の新規事業はうまくはいかない。
■スタートアップの経営者が陥りがちと思われる心理ループ
1:まず、自分のアイディアに盲目的に惚れ込んでいる
2:コンセプトを褒められるなど成功体験がある
3:メディアに多数掲載され、浮つき始める
4:メディアPRに引っ張られ、ユーザー数が伸びる
5:結構ユーザー伸びてきて、イケるんじゃないかと思う
6:外部からの自社サービスに対する批判的な意見を聞かなくなる
7:ユーザー数の伸びの鈍化やアクティブ率が低下してくる
8:一時期的なものさ、大丈夫!と思う
9:あれ?いつまでこの伸びない状態続くの?むしろ下がってきた?
10:いや、絶対このサービスはいけるんだ!大丈夫!
11:伸び…ない…
12:撤退した方がいいかも…いや…
1:謙虚さを絶対に忘れないこと
2:常にフラットに自分の事業を懐疑的な視点でも見ること
■なかなか撤退できない心理
1:自分のアイディアやサービスの否定は、自分を否定するに等しい
2:今まで投資した時間やお金が多いほど、回収に執着する
3:根拠の薄い「いつか爆発的に伸びるのでは!」という期待
この辺が大きいと思う。特に1って結構大きいのでは。僕は海外経験が多くないから一概にはいえないけど、日本人は「自分のアイディアやサービスを否定されることで、自分自身を否定された」と感じる人が多いと思う。僕はよくサービスを否定する人間だと思いますが、そのサービスを運営する人を否定はしません。否定するほどその人のことを存じ上げませんし。
言うは易しですが、僕かて「The Startupはマジクソな記事ばっかだ」といわれると、自分自身を否定された気になり、否定してきた相手に好感は持てないでしょう。よほど上手い伝え方をしない限り「The Startupはクソだと思っているが、それを運営している梅木をクソだと思っている訳ではない」と独立事象としての印象を相手に与えることは難しい。
■撤退基準
1:累積投資の回収(過去への執着)を捨て、未来の可能性だけ考える
2:事業が伸びる兆しの有無
3:1と2に関する第三者からの意見
自分自身の否定は辛いという人間心理の問題はクリアーしたとして、実際に撤退か継続を考える際にはこの2点に留意すると良いのではないか。今まで掛けた金や時間は無視して、本当にこのサービスはユーザーに継続的に使われ続けるものなのか。改善して数字が跳ねるものなのか。最初からマーケットニーズからズレてたんじゃないか。
そして小さくてもいいから、事業が伸びる兆しがあるのか。何か良いニュースはあるのか。悩み続けてずるずるいくより、スパッと撤退した方が類損も少なくて済み、良いことずくめでしょう。撤退力は優秀なビジネスパーソンの一つの要件といえるかもしれません。サービスの撤退という大事に限らず、施策を始めてチューニングしてダメだと思ってすぐ撤退。これは実務での判断で非常に大切な力だと思う。
1と2から最終的にはサービスのオーナーが撤退か否かを判断するわけですが、第三者の有識者からの意見はこういう時にすごく有用だと思います。しかも、そのサービスのオーナーとの関係性を壊したくないからといって、オーナーに不利なことを言いたくないような「いい人」ではなく、本音でズバズバ言ってくれるような人。例えば「最近のThe Starup、微妙っすよね」と言ってくれるどこかの村上さんのような人。こういう第三者からの意見はもの凄く貴重です。
何事も始めるより撤退することの方が難しいですよね。僕は人生における撤退経験多数ですが(多くことに挑戦した結果であると信じたいw)自分の意志で撤退して後悔したことは一度もありません。振り返ると、撤退の意思決定のコツはやはり過去に拘らないことだなと思いました。過去に拘るとフラットな意思決定はできません。